金融経済研究所

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レポート

Report No.018

新しい夜明けのアジア part 1

2014/05/08

東南アジアにはアセアン10カ国がある。その国々は、インドネシア、フィリピン、タイ、カンボジア、ミャンマー、ラオス、ベトナム、マレーシア、シンガポール、ブルネイであり、東南アジア諸国連合を形成して、AFTA(ASEAN自由貿易地域)を設けている。 東南アジア諸国連合をハブとして、周辺国である日本、中国、韓国、印度、豪NZが加わり、「ASEAN+1」という5本の地域FTAが網の目のように張り巡らされている。この結果、毎年のように関税削減や撤廃が各国間で協議されては実施されているので、それぞれの国々へ進出する際、企業は自社サプライチェーンに適したFTAをどう活用するかで貿易コストが異なってくる。今後、「日中韓」「RECEP」「TPP」などのFTAネットワークが加わる可能性がある。こうした動きに注目しておくことが、企業の収益率を最大化するために重要となってくる。

注1 FTA(Free Trade Agreement)自由貿易協定が物品の貿易に関する関税削減・撤廃やサービス貿易の自由化を目指す協定であるのに対し、EPA(Economic Partnership Agreement)経済連携協定は経済協力、人的交流、知的財産権管理や投資を含む包括的は協定。

企業全体の収益率を高めていくために、そうした政府間協定に加え、各国の投資優遇措置や労働コスト、地代など関税以外の項目を総合的に評価して生産基地、輸出基地などを決めていくことが重要になっていく。たとえば、日タイ経済連携協の下で、二輪車、四輪車に使われるギアボックス、クラッチ、シートベルトなど自動車部品100品目のうち80品目の輸入関税が撤廃された。協定(JTEEPA)が締結される以前は、こうした部品はタイへの輸出は輸入関税率20%であったが、2012年4月1日からは0%になった。残るエンジン・同部品など20品目は今年4月1日に撤廃される予定になっている。ただし、通常の品目と違い、原産地証明書(C/O)を輸入時に提示するだけでは特恵関税は享受できない。しかも、「自動車組み立て製造に使用される部品」に限定され、かつ輸入者は自動車製造会社もしくは自動車部品製造会社に限られている。こうした関税提携関係は各国ごとに決められているわけだが、関税を原則10年以内に100%撤廃しようとするのが環太平洋パートナーシップ協定(TPP)である。

企業が海外進出を図る場合、通商貿易協定の政府間の動きを知るだけでなく、特に先進諸国にいる企業が後進国へ進出する際、心すべきことは、後進国の経済発展過程を知ることである。通常、後進国は、消費財工業品の輸入に始まり、その後国内生産、そして輸出というプロセスをたどる。そのあとを追うのが、生産財であり、同じように、輸入⇒生産⇒輸出という過程をたどる場合が多い。これを故赤松要博士(1896-1974)が後進国の経済発展を「雁行形態論」として1960年代に指摘したが、今世紀になって労働集約型⇒資本集約型⇒知識集約型という経済発展が地球規模で行われている。こうした3つの発展形態がちょうど空を飛ぶ雁の集団が第一陣、第二、第三と列を組んで飛んでいく姿に似ているということでFLYING GEESE MODELとして世界的に知られている。「雁行形態論」は業種単位だけでなく企業内部での経営戦略に適用される。たとえば、日本におけるミシン産業の推移である。後進国であった明治初期になってミシンが普及するのだが、当時は輸入品のみであったが、修理などを通じて技術を習得した技術者によって徐々に国内生産が行われるようになった。しかし、大正時代、昭和時代になっても国産品は質・量においてシンガーなどの輸入品にはかなわなかった。ミシンの需要が飛躍的に増加したのは、繊維製品(アパレル)が日本の主な輸出品になったからである。ミシンの普及は工業用だけでなく家庭用にも拡大していったが、やがてミシンは需要な日本の輸出製品となった。1970年ごろから家庭用ミシンの生産は、高級機種等を除き、中国、台湾などに移転するようになった。近年になると、工業用ミシンでも、低コスト化やアパレル産業の海外移管などで、海外への移転が行わるようになった。ミシンは精密帰化であるため、高精度の金属加工技術が求められるが、部品の多くは今なお日本国内で製造されているが、最近はコストダウンのため海外に製造工場をもつのが主流になってきた。まさに、企業内でもこうした雁行モデルが事業の存続のために一般的になってきた。

この背景には世界経済のグローバル化現象があるが、実はこうした動きは今に始まったことではない。紀元前3千年ごろから海洋都市国家のフェニキア人は、中心都市ビブロスの背後に広がるレバノン山脈に大量に育つレバノン杉を材料に造船技術を発展させ、海洋航海の技術を高め地中海だけでなくアフリカ大陸、北アメリカまで航海していたという。特に地中海貿易を独占的に広げる海商民として、地中海・黒海・紅海沿岸に都市国家を建設する勢いをもっていた。現代におけるグローバル経済は各国の政府代表をネゴシエイターとして、それぞれの国が有する発展段階に合わせながら、国境を越えて企業のもつ技術、製品、経営力を伝播させることで世界全体の経済発展をはかることにあるわけで、究極的には企業単位の展開に収斂することになる。それを効率良く実現させていためには、企業を支える社会インフラの構築(民主主義、社会的公正、女性のエンパワーメント、教育の高度化など)が求められることになる。

紀元前の経済発展が地中海を中心にした古代フェニキア人の活躍が突出していたが、21世紀に入り、中国、インドに加え、アセアン10カ国が世界のなかでの成長エンジンを抱えた地域であることに誰も疑うものはいない。

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