金融経済研究所

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レポート

Report No.016

アルゼンチンタンゴを踊るパートナーはいないのか?

2014/01/31

アルゼンチンが騒がしい、とウォールストリートの友人は言う。ブエノスアイレスという町の意味は「良い空気」とスペイン語で意味するのだそうだ。が、資本主義国家のなかでこの国ほど金融界から信用されていない国はない。

1980-90年代、中南米の国々が対外債務のデフォルトの大嵐を引き起こした。アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、ドミニカ共和国、エクアドル、グアテマラ、ホンジュラス、メキシコ、ニカラグア、パナマ、パラグアイ、ペルー、ウルグアイ、ベネズエラなどほぼ全部の中南米国家がデフォルトしてしまった。当時、日本を含む先進諸国のバンカーは国家に貸し付ける資金がデフォルトするわけがないと積極的に貸し付けをし債券を引き受けた。それが当時の金融界の常識であった。国家の徴税権や中央銀行の紙幣発行権などを持つ国家がデフォルトするリスクは限りなく小さいとウォール街の一流バンカー、とりわけCitibankのトップでも思っていた。

冷静に考えれば、どんな国家でも、支払い能力(税収等の基礎的収入)を超えて節度を越えた支出(多くは戦費)に走ると、一般人並みに破綻することは歴史の教科書が教えるところだ。
当時世界最大の米国の銀行シティバンクが中南米危機で潰れかかったが、サウジアラビアのアルワリード王子が救済がなければ連邦国家が救出したのであろうか。2008年のリーマン・ショックでは、それが現実化してしまったが。東京資本市場でも、アルゼンチンの発行するサムライ債がデフォルト(債務不履行)してしまった(2001年)。
悪夢の再来なのか。アルゼンチンの長期国債の利回りが10%を超えてしまっている。国家統計局の発表ではインフレ率は10%くらいと発表しているが、実際には26%はあると言われている。

高いインフレ率を認めてしまうと、政府が発行している物価連動国債の金利負担が増えてしまうので、低い数字を出していると街ではいわれている。

頭にきたIMFもでたらめな経済統計を修正せねば制裁を課すと警告したと言うのだから、この国の指導者の資質が問われている。しかも、実態を公表した民間機関は罰金の処分を受けたと言うのだから驚きだ。

しかし、この国は1951年以来5回もデフォルトをした国でいまだに体質は変わらないようだ。最もBRICKsの勃興が注目されていたとき、この国の経済も安定と成長を取り戻すかに見えた。物価上昇率は2002年25.9%から03年13.5%、04年4.4%と著しい改善をみせ、失業率も低下した。ネストル・カルロス・キルチネル大統領は世界からも大きな評価を得ることになった。しかし、不運なことに、大統領は病魔に倒れ2007年の大統領選挙では再出馬を諦め、代わって妻のクリスティーナ・・フェルナンデス・キルチネル上院議員が出馬して大統領に当選した。しかし、2010年頃まで黒字を続けた経常収支が、2011年以降赤字に転落してしまった。大きな原因は中央銀行が自国通貨ペソの買い支えを支持していた前大統領が病死したことであった。米国の金融政策とは関係ないところで自国通貨を割高にすることで物価の安定を図っていたと言うわけである。買い支えがなくなってから、物価は上がり始め、警官も生活苦のため賃上げを求めてストライキ、治安は恐ろしいほど悪化し、略奪殺人が全国に横行していると言う。

今年1月23日、アルゼンチン・ペソは外国為替市場の対ドル相場で15%も暴落した。一日の下げとしては、デフォルトした2002年以来最大の下げ幅となったので、アルゼンチン・ショックとして世界の金融市場を一時震撼させ、特に新興国家の市場では激しい動きを見せた。アルゼンチンの外貨準備高は3年間で40%も減り、約295億円(約3兆円) という水準に落ち込んでしまった。

インターネットでの買い物を規制するといった一時しのぎの対策程度で国難を乗り越えることはできないと、経済無策で評判が落ちたキルチネル大統領(前大統領夫人)はフォークランド諸島の領有権問題に国民の目をそらそうとしていると言われている。19世紀からイギリスが実行支配し、住民の99%が英国の保護を支持しているこの諸島には莫大な量の原油が埋蔵されている。海底油田の開発に関心あるアルゼンチンは1982年に英国と起こした戦争をまた繰り返す可能性があると一部の報道が伝えるほど国内は緊迫している。ギリシャの危機はEUの中央銀行などの支援で小康を保っているが、アルゼンチンのデフォルトは避け難いという見方が強い。
アルゼンチンタンゴをこよなく好むこ国の有権者には国を指導する良きリーダーにめぐり合わせないのか。あるいは選べないのか。前大統領の時はデフォルト続きで失いかけた信用を取り戻すかに思えた。ところが、今や、でたらめな経済統計を出すようになる国になってしまった。英国Financial Timesから「世界中からイエローカードを突きつけられた大統領」の国として報道されたほどだ(2012年10月1日)。

この国の経済規模はGDPで約470億ドルと台湾くらいの大きさであるから、アメリカの1/30ほどである。海外の金融機関の貸付残高も少ないのでアルゼンチンが世界経済に与える影響は少ないと見られている。アルゼンチン・ショックが世界経済に与える影響は大きくはないだろう。どのバンカーもアルゼンチンでいかなる美女とでもタンゴを踊る様子はない、と友人は醒めた声で言う。

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