金融経済研究所

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レポート

Report No.007

金メダルと黄金展

2012/08/12

 金メダル、金地金(きんじがね)、金閣寺
この暑い夏のある日、ある百貨店で「黄金展」という催事をやっていた。
入り口には3kgの金塊が飾られていて、誰でも指で触ることができる。持ち逃げされないように、そばにガードマンが立っていた。売り物ではなく、キラリと光る客引きの役割である。
1gが時価4,500円として、この金塊のお値段は約14百万円。

ロンドン・オリンピックは、日本のメダル数は史上最多の38個であったが、金メダルは掲げた目標の15個を下回るだけでなく、北京オリンピックの9個にも達しない7個と期待外れの結果であった。 昨年制定されたスポーツ基本法の手前があるからといって、金メダルの獲得目標を上げたのかもしれないが、金メダリストへの道はまことに険しく、それだけに価値が高いということか。オリンピックの金メダルは、銀に金箔を張ってある。オリンピック憲章で最低6gの純金を使うようにと決められている。金メダルの時価は金箔の価格でみると、27,000円となる。 金メダリストにとって大切なのは、金銭ではなく名誉、価格ではなく価値。いまだかって金の量が少ないというクレームが出た話は聞いたことがない。

さて、デパートの「黄金展」。金塊に触って会場の中に入ると、おカネ持ちらしいご年配の人たちが大勢ショーケースを覗いている。堅牢そうなガラスの中には、金色をした仏像やネックレスなど、いろんな宝飾品が展示されている。値段をみると、何百万円、何千万円。驚きである。

金は、特徴の一つでいくらでも薄く引き伸ばすことができる。1gが畳一枚くらいまで伸びる展伸性が金の特徴だそうだ。目の前に売るために置いてある金細工製品、それぞれに使われている金は1gもないのかもしれない。

1g 4,500円の金を引き延ばして、鉄か銅かあるいは棒に張り付けると100倍、1000倍以上の値段になる。 金細工師の価値が加わっていく。

金を取り扱う業者の広告は、「金を買い取ります」と書いてあるが、「金を売ります」とあるのは少ない。銀座にある有名店は、売値、買値を表示しているが、街の業者、彼らは古物商と呼ばれ「買い取り」が専門である。

金を買って薄く引き伸ばして金細工にすれば、何十倍、何百倍と膨らむのである。そんなことを知ってか知らいでか、消費者は有名なデパートが開く催事にやってきて、金塊そのものを買うのではなく観音様の金張りの仏像をありがたや、ありがたやと買っていく。それで満足感が得られればいいではないか。オリンピックの金メダルとなんらかわらない、不遜な言い方かもしれないけれど。

 
金閣寺に使われている、薄く延ばした金箔は全部で20㎏と聞いたことがある。昭和62年(1987年)に修復されたのだが、修復費用は7億4000万円だった。使った金箔の値段は、今の価格で9千万円となる。その頃の金価格は1g 2,100円ほどであったから、金地金で4千2百万円の価値があっことになる。 最近の金価格は1g 4,500円ほどであるから、倍以上の価値になっていることになる。もっとも、金閣寺はいまや世界遺産になっているから、値段をつけようがない。オリンピックの金メダルと同様、値段ではなく価値に「値打ち」がある。

それにしても、ガラスケースのなかにある金張りの仏像がウン千万円もするのだから、改めて価格と価値の関係に妙に関心をもった。そこそこに会場を出た。ますます熱射が激しく照り返す舗道を歩くと、砂漠を歩くとはこんな感じなのかと思わずにはおれない。

オアシスに見間違えたくなる自動販売機を見つけた。120円を入れて、500mlの水が入ってあるペットボトルを手にした。手に冷たさを握りながら、ラベルを読むと「南アルプスの雪解けの味」とある。まことに商売上手である。水道局の水の何十倍かの値段に違いない。採水地ではタダ同然でも、都会に持ってくれば価値の価格は高くなる。サハラ砂漠のど真ん中ではもっともっと高くなることだろう。

価値と価格のバランスを消費者にどう納得させるか、商売のコツなのだ

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