金融経済研究所

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レポート

Report No.005

資産の安全な避難先(safe haven)としての債券市場

2012/05/12

  フランスとギリシャの最近の選挙結果は、一時的にせよ収まるかに見えた金融不安を激しく呼び起こすこととなり、リスク資産である株式や商品市場から資金が流出し、安全資産とみなされる日本とドイツの国債に向かった。その勢いは激しく、短期のドイツ国債はマイナス金利になるまで投資が集中した。投資家はドイツ政府に金利を払ってまでも安全資産に逃避したと言える。一方、世界の株式市場は、日本、ドイツも含め、大幅に下げることになり、既に下落していた商品市況もリスク・フリー・モードになり金価格が1オンスあたり1,600米ドルを割ることになった。債券市場が安全資産の避難先として日独の国債だけでなく優良会社の社債にまで買いが及ぶ動きが出てきている。

 こうした中で、まだ目立つほどではないが(と言うことは殆ど新聞などに取り上げられない)意外な現象が起きている。それはロンドン証券取引所で起きている現象だが、個人の投資家が株式ではなく商品でもなく債券に関心を寄せ始めているということである。
 社債は従来、大口機関投資家に販売されてきたが、2年前に創設されたOrder Book for Retail Bonds (ORB) の電子取引市場では小口の個人投資家による社債投資が活発になってきている。
 ORBではソブリン、国際機関、企業などが発行する債券約156銘柄が取引されており、額面価格は個人投資家が買いやすいように1,000英ポンド(125,000円)から1英ポンド(125円)と小さな単位になっている。この2年間に発行された金額は15億英ポンド(1900億円)を超えてきた。ユーロ、米ドルを中心とするロンドンの債券市場で発行される規模と比較すればまだ小さいが、債券の種類も普通社債、ステップアップ債、インフレ・リンク債などと幅広く、期間も5年から10年と様々である。この電子取引市場は2010年2月に創設されたばかりであるが、低金利時代と株式市況の下降趨勢の下で個人投資家による投資が順調に増えてきている。
 今年の二月には、人民元建て社債で香港上海銀行(HSBC)が20億人民元(196百万英ポンド、245億円)を2.875%で資金調達した。これはORB 市場で発行された外国企業初の社債となった。銀行の貸出が停滞している中で、しかも預金者が金融機関の預金だけに依存するわけにはいかない時代になって、個人投資家自らが企業に貸し付けることになる債券投資に着目したとは、さすがロンドン金融センターである。

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