金融経済研究所

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レポート

Report No.003

大きな大陸の中の小さな巨人

2012/01/12

巨大なユーロ市場の隣で、懸命に類焼を免れようと死闘している国がある。その国はユーロ市場に囲まれていながら、ユーロ通貨を採用しないことを国民投票で決めた国である。

人口746万にして、実質GDPは3880億ドル、日本の4兆3666億ドルの9%の規模にすぎないにも関わらず、国際情勢が不安定になると、世界の隅々から逃れてくる通貨の溜り場になる国、スイスである。

ユーロ危機が世界を震撼させている中で、今回もスイスフランは難を逃れようとする通貨の避難通貨として円と並んで猛烈に買われることになった。

昨年、スイス国立銀行(中央銀行)は9月6日、ユーロに対するスイス・フランの上昇に歯止めをかけるための上限目標レートを1ユーロ=1.20スイス・フランに設定し、この水準を達成するまで無制限の介入をすると発表した。

それまでは、スイス・フランは円と同様、信用力を失墜するドルやユーロから逃避して買われる通貨として、高値を更新していた。昨年8月には1スイス・フランは1ユーロ近辺まで高騰し、為替介入しても、その動きは止まらず、スイス国立銀行は260億スイス・フランの損失を出すまでに至った。

為替を安くするための対策として、(1)他通貨に比べ投資魅力を低下させるために利下げする、(2)市中に出回る紙幣を増やして、貨幣価値を下げる、(3)自国通貨を使って他国通貨を購入する為替介入、の三つがある - 教科書的に纏めるとこのようになる。

スイス国立銀行は、国内の金融政策でスイス・フラン高を抑制しようとしたが、効果はなく、4月から21%も上昇し、8月10日には1.03ユーロの最高値をつけるに至った。外貨建て資産の評価損が巨額に達したため、フィリップ・ヒルデブラント総裁の責任問題にまで発展した(彼は夫人の不明朗な外為取引で1月9日辞任した)。

上限設定の発表後、スイス・フランはユーロに対して安定した動きで推移している。総裁辞任後も1ユーロ=1.20スイス・フラン台を保っており、スイス国立銀行は中央銀行として通貨の安定を目指すことに成功したとして世界の注目を集めている。当銀行のバランスシートでの総資産に占める外貨建て資産は80%近くになっている。その外貨建て資産の半分以上はユーロ通貨で占められている。

下げ圧力にさらされる自国通貨の防衛には十分な外貨準備が必要になるが、上げ圧力を抑制する場合は無制限に自国通貨を供給することで、為替レートの安定を図ることが可能になる。しかし、スイスの通貨供給量は世界を駆け巡る投機的資金によって左右されかねないという問題が残ることになる。

日本の円とスイスのスイス・フラン共々、国際通貨不安の渦中で世界的な財政問題が焦点になるにつれ、今後の経済運営を探る上でも、両国の中央銀行としての対応の相違性と類似性が注目される。

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