金融経済研究所

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レポート

Report No.002

欧州通貨危機の背後にあるもの━強靭なドイツ経済

2011/09/25

もし欧州共通通貨ユーロが創設されることなく、ドイツが今もマルクを使っていたならば、日本やスイスと同じように為替対策の為に巨額の資金が投入されていたにちがいない。

2002年、欧州通貨ユーロの登場は、当時、欧州各国内では、アメリカや日本との競争で後塵を廃していた欧州がようやく巻き返す時代が到来したということで、ユーロの紙幣にはどこの国にも実存しない空想の建造物が描くことで、二つの大戦の辛酸を舐めた欧州の国々は団結と繁栄に向かって突き進む体制を整えた。

それが、今や、世界を揺るがす経済危機として、共通通貨ユーロは世界を不安と混乱に陥れようとしている。

欧州内でさえ、南北に分かれ、欧州北国諸国はギリシャをユーロ圏から離脱させるべきだという議論さえあり、欧州南国諸国は一向にはかどらない財政改革にユーロ圏内にとどまることの自信をなくしつつあるようにさえみえる。

欧州で最大の経済大国はもちろんドイツであるが、欧州全体の危機的状況のなかで、経済活動は比較的順調に推移している。今年7月には連邦議会予算委員会は、東ドイツ時代に壊されたドイツ帝国時代の王宮を復元させる費用として約6億万ユーロ(約650億円)の支出を認めているほどである。

周辺諸国が財政難で経費節減に呻吟しているなかで、ドイツはひとり怪気炎をあげているかに見える。

ドイツの経済がユーロ危機のなかで比較的順調な理由はなぜか。

その主な要因は、ドイツにおける経済の生産性の向上と、実質的な通貨切り下げによる競争力の強化にある。ドイツ経済は構造的に輸出依存度が高いことは日本の比以上である。しかも、ドイツの貿易高の半分はEU諸国の半分をしめるほどの大きさである。    

GDP(国内総生産)に対する比率では、ドイツの経常黒字は中国の経常黒字を上回っている。

勿論、こうした優越的な競争力は有利な為替だけにあるのではなく、欧州の単一通貨ユーロが導入されて以来、いかに近隣諸国だけでなく世界との競争力を維持していくか弛まぬ国内政策を実行してきた。

たとえば、ドイツの単位労働コスト(ULC)は年間平均1.4%低下したが、フランスやイギリスでは0.9%上昇している。ドイツ企業は実質賃金の上昇を抑え込むことで競争力の維持をはかったのである。

ドイツにはダイムラーベンツとかフォルクスワーゲン、そしてBASFなどで代表される世界的大企業がある一方で、「ミッテルシュタント(Mittelstand)」と呼ばれる中小企業の存在がある。

ドイツ企業の99%は330万社もある中小企業であり、ドイツ経済の原動力になっている。就業者の70%にあたる2,300万人が中小企業に従事している。統一通貨の導入にあたり、ドイツの中小企業は、その多くは家族経営であるが、市場の動きに柔軟に対応できる企業家精神を発揮して海外拠点の展開、新技術の開発など経営改善の努力を怠らなった。

ドイツは日本円、スイスフランと並んだ三強通貨のマルクを放棄しながらも、ユーロ圏内の国のなかで単一通貨のメリットを最初にとった国である。

ドイツからの輸出の半分はユーロ圏内であり、他のユーロ諸国はドイツとの競争で為替レートの切り下げでは国内経済を守ることができなくなってしまった。

ドイツの強靭な経済力は、ユーロ通貨危機の中で見落とされがちであり、ましてその

強靭さは割安になった為替にフリー・ライド(タダ乗り)した結果にすぎないという議論

があるなかで、メディアには滅多にとりあげられない「ミッテルシュタント」の貢献を忘れてはならない。日本は他山の石とすべきである。

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