金融経済研究所

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レポート

Report No.001

鵜の目鷹の目

2011/08/31

今年の夏は電力の消費がどれだけ節減できるかとか、首相がいつ辞めるのだとか、一日一日が緊張させられる毎日であった。どれもこれも大事に至らず事が運んだということかもしれない。すなわち、電力は大停電することもなく、菅直人前首相も秋のアメリカ訪問も計画していたようだが、予定通り、新しい首相に席を譲ることになった。

市場が強い関心をもって注目していたのは、8月26日に行われたバーナンキ議長の経済シンポジウムの講演であった。

昨年8月は講演の二か月後に、FRBはQE2(量的緩和第二弾)に踏み切ったが、S&P総合500は2011年5月までに25%近く上昇したこともあり、今年の夏も、市場では同じような期待でもって、ワイオミング州ジャクソンホールでの経済シンポジウムに全世界が注目したわけである。ジャクソンホールは、近くにイエローストーン国立公園がある標高2000mにある。避暑地として夏に多くの観光客が訪れる。

バーナンキの講演では、半ば予想されたように、QE3の発表はなかったが、講演内容から、いずれ第三弾の金融緩和を実行せざるを得ないというメッセージを市場は受け取った。10年物の米国債の利回りが2%を割り込んできたからである。インフレ率の上昇の懸念がある場合は、FRBは更なる量的緩和に踏み込むことを躊躇うかもしれないが、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)では通常の1日から2日間に延長し20日、21日の両日に、追加緩和の必要性を議論することになった。

しかし、緩和はドル安を加速させることになりかねないし、その結果、急速に悪化している新興国の中には通貨高を防ごうと各国も追加緩和に走る可能性が高い。

安全資産として、円と並んで急騰したスイスフランに先手を打つかのように、スイス国立銀行は追加的な金融緩和に踏み切った。日本銀行も8月には10兆円の追加緩和を行ったが円高を反転させるまでにはいかなかった。

歴史的な円高水準は長く続くという観測のもとで、産業界は円高対策に乗り出してきたが、それは単なる経費節減という応急措置ではなく、海外からの部品調達や海外への工場移転などを含む恒久的選択を企業は採り始めた。

今年の夏は電力不足のために工場での操業停止日数を増やす傾向であったが、多くの日本企業にとって休暇どころか大きな事業計画の見直しを行うために奔走することとなった。政府も経済界も9月は来年以降の方向を展望するための重要な月になる。

英国ファイナンシャル・タイムズの記者が、一面瓦礫と化した陸前高田市を訪問し、激しく被災した工場を取材し、8月31日付の記事にしていた。その内容は、復興から立ち上がろうとする回復力と、今回の震災を新しいスタイルの事業を生み出す出発点にしたいと語る経営者の決意を称賛していた。こうした日本企業経営者のめげない意欲と冒険心に世界が日本の円に投資する正当性を見出そうとする記者の姿勢を感じた次第である。(2011/8/31)

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